データサイエンティストを目指すなら、取得しておくと良い資格のひとつが
「アクチュアリー試験」です。
保険や金融関係の資格として有名なアクチュアリー試験ですが、実はデータサイエンティストに必要なスキルもしっかり学べます。
今回は、アクチュアリー試験とはどんな試験なのか、
データサイエンティストが取得するメリットは何か等を紹介します。
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アクチュアリー試験とは
アクチュアリー試験とは、数理業務のプロフェッショナルを認定する資格です。
数理業務とは、統計学や金融工学などの数学的知識を活用する業務のこと。そのため、アクチュアリー試験は、数理業務が必須の金融業や保険・年金に関わる仕事に役立つ資格です。
アクチュアリー試験に合格し、研修を受講するとアクチュアリー会の正会員になれます。正会員になることで、アクチュアリーと名乗れるようになります。受験者は、金融や保険・年金に携わる方が多いですが、学生の間に取得を目指している方もいらっしゃいます。
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アクチュアリー試験の日程・受験地
アクチュアリー試験は年1回12月に開催されています。
毎年6月頃に試験の詳細が発表されるので必ず確認しておきましょう。受験地は東京または大阪なので、遠方の方は試験日に合わせて新幹線・飛行機の手配が必要です。
アクチュアリー試験の難易度
日本アクチュアリー会の正会員になるのは簡単ではありません。なぜなら、合格すべき科目数が多く、さらにプロフェッショナリズム研修という研修を修了する必要があるからです。ここで、合格すべき科目は以下の通りです。
【第1次試験】
・数学
・生保数理
・損保数理
・年金数理
・会計・経済・投資理論
【第2次試験】
3つのコースから1コースを選択します。各コース2科目の受験が必要です。
「生保コース」 生保1・生保2
「損保コース」 損保1・損保2
「年金コース」 年金1・年金2
以上の通り、第1次試験5科目と第2次試験2科目の合計7科目に合格する必要があります。まずは1年目で第1次試験でアクチュアリー会の準会員になり、第2次試験合格とプロフェッショナリズム研修修了で正会員を目指すという流れです。
そのため、アクチュアリー会正会員になるには最低でも2年かかってしまいます。実際には、企業や組織に所属して業務を行いながら正会員を目指して学習を続ける方が多いようです。
アクチュアリー試験の合格率
2018年度の第1次試験の合格率は以下の通りです。各教科の合格率から見ても、アクチュアリー試験の難易度は高いことが分かります。
・数学 13.0%
・生保数理 12.8%
・損保数理 23.5%
・年金数理 35.2%
・会計・経済・投資理論 14.1%
各教科の合格率は低いですが、アクチュアリー試験では第1次試験の5教科全てを一度に合格する必要はありません。1度受験して不合格になった科目を次回受験する、という方法でも構いません。
アクチュアリー試験の過去問
アクチュアリー試験の過去問は、日本アクチュアリー会「資格試験過去問題集」で公開されています。冊子などの紙媒体での販売は行われていないため、各科目の過去問をダウンロードし、必要に応じてプリントアウトすることをおすすめします。
また、第1次試験の各科目の問題例は、日本アクチュアリー会「問題例」にて閲覧およびダウンロード可能です。ざっくりと出題内容を確認したい場合は、こちらを利用しましょう。
アクチュアリー試験の数学
アクチュアリー試験の出題範囲の中でも、特にデータサイエンティストに必要な知識なのが「確率」「統計」「モデリング」です。数学は中学の基礎から大学で習う範囲まで幅広く出題されるので、しっかり学習しましょう。
日本アクチュアリー会「参考書籍のご案内」では、難易度の高い数学を効率よく学習するための教科書や演習書・参考書が紹介されています。
「確率」おすすめの教科書
培風館『入門数理統計学』は、確率論・数理統計学を勉強する人のための入門書。大学生や技術者が数理統計学を学ぶのに最適な書籍です。
ただし、購入者のレビューの中では「高校の微分・積分・確率を理解していないと難しい内容」との意見も多いため、自信のない方は高校数学から復習しておくとスラスラ理解できるようになるでしょう。
「確率」おすすめの演習書
培風館『確率統計演習1 確率』は「確率」の範囲で重要な問題が網羅されている演習書。繰り返し学習することで確率の計算スピードもアップさせられると高評価です。教科書で基礎を学習した後は、こちらの演習書で実力をアップさせましょう。
「統計」おすすめ参考書
東京大学出版会『統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)』は、統計学の基礎が分かりやすく解説された参考書。実例を使って図表で分かりやすく解説されているので、統計学初学者にも理解しやすい内容です。
「統計」おすすめ演習書
培風館『確率統計演習2 統計』は、初学者が間違いやすい問題が網羅された演習書。「統計」範囲の重要問題が豊富に出題されているので、何度か繰り返すことで確実に統計のスキルを強化できます。
「モデリング」の教科書・参考書
「モデリング」を学習するための教科書・参考書は、日本アクチュアリー会が販売されているので、そちらを利用するのがおすすめです。
また、数学の基礎学習を終えたら、日本アクチュアリー会が販売している『確率・統計・モデリング問題集』を使用して、さらなる実力アップを目指しましょう。
データサイエンティストとアクチュアリー試験
データサイエンティストには必要なスキルが3つあります。データサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力です。アクチュアリー試験に向けて学習を進めると、データサイエンティストに必要な「データサイエンス力」が身につけられます。
データサイエンティストに必須スキルが身につけられる
データサイエンティスト協会が公開している「スキルチェックリストver2.00」によると、確率・統計・モデリングのスキルは見習いレベルのデータサイエンティストから必須です。例えば、確率分布や統計モデルの理解、モデリング手法に応じた最適なデータ加工などは、各分野を基礎から理解していなければなりません。
アクチュアリー試験の第1次試験「数学」合格に向けて学習するとデータサイエンティストに重要な確率・統計・モデリングの知識が身につきます。アクチュアリー試験の数学の難易度は高いため、合格に向けて学習を進めていくと実践に役立つ高スキルが身につけられるでしょう。
データサイエンティストを目指すために資格を取得したいと考えているなら、まずは第1次試験の「数学」合格を目指して学習を進めていきましょう。なお、1科目以上に合格した場合は、アクチュアリー会研究会員になれます。
就職・転職に有利になる
アクチュアリー試験は難易度の高い資格のため、アクチュアリー会正会員であることを履歴書の資格欄に記載できます。正会員にはなれていない場合でも、準会員・研究員であることを記載しておくと、意欲や頑張りを認められるでしょう。
例えば、大手求人サイトindeedの「アクチュアリー/データサイエンティスト」求人募集の求めている人材の資格・学歴は以下の通りです。
「アクチュアリアルサイエンス、数学、統計学、データサイエンス、コンピュータサイエンスに関連する学位」「(歓迎)アクチュアリー試験研究会員/準会員/正会員」と記載されています。
この求人からも、アクチュアリー試験の1科目でも合格している人がアクチュアリーまたはデータサイエンティストへの就職・転職に有利であることが分かります。ちなみに、こちらの求人募集を行っている会社は外資系損害保険会社です。
データサイエンティストとしてのスキルだけでなく、アクチュアリーのスキルを持ち合わせていることで、金融業界・保険会社などでも求められる人材となれます。目指せる業種の種類も多くなるでしょう。
国際資格CERAでグローバルで活躍する人材に
アクチュアリー会の正会員になると、国際資格であるCERAの受験資格が得られます。CERAとは、Chartered Enterprise Risk Actuaryのことで、ERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)に関する国際的な資格です。
エンタープライズ・リスクマネジメントは、企業や組織に起こる可能性のある、あらゆるリスクを正しく把握し、組織全体で対応策をとること。エンタープライズ・リスクマネジメントは、企業経営にとって大変重要です。
そして、CERAが求められる分野は非常に多く保険会社・金融会社にとどまりません。テクノロジー・エネルギー・物流にわたるまで、エンタープライズ・リスクマネジメントに関する国際資格CERAを取得している人材の需要が高まっています。
データサイエンティストは企業や組織が所有している大量のデータを整理・分析し、企業の新製品開発や経営判断に役立てます。そのため、企業や組織に起こり得るリスクを把握し、対処法を導き出すスキルが重要です。
CERAはデータサイエンティストとしてのスキルアップにも役立つ国際資格です。アクチュアリー会正会員になった後は、CERAを目指してみてはいかがでしょうか。
グローバルに活躍するデータサイエンティストになろう
今回は、データサイエンティストに必要なスキルが取得できるアクチュアリー試験について紹介しました。アクチュアリー試験は難易度のやや高い試験ですが、各科目合格に向けて学習を続けることで、データサイエンティストに必要な数学のスキルがかなり身につきます。
第1次試験を1科目取得するだけでもアクチュアリー会研究会員の資格が得られ、この資格は履歴書にも記載できます。さらに、アクチュアリー会正会員になれば国際資格であるCERAの受験資格も得られます。CERAでは企業にとって重要なエンタープライズ・リスクマネジメントが学べるので、データサイエンティストとしてさらにスキルアップが目指せるでしょう。
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<<参考サイト>>
データサイエンティスト協会「スキルチェックリストver.2」