美しいビーチやリゾートのイメージが強いフィリピン・セブ島ですが、その裏ではいまだに多くの人々が貧しい暮らしをしており、約半数の子どもは義務教育を終えることができません。
セブ島におけるエレメンタリースクールの入学率は86%と、実に14%の子どもは小学校に通うこともできず、卒業する割合は全体の75%。
これがハイスクールになると入学率57.3%、卒業する割合は52.9%と、およそ半数の子どもが義務教育を受けずに社会へ出ることになります。
NPO法人セブンスピリットホームページ内「セブンスピリットの使命」より
http://seven-spirit.or.jp/mission/
みなさん、こんにちは。セブ島の語学学校・サウスピークインターンのMinaeです。
シリアスな引用文に始まった今回の記事は、セブ島の未来と日本のNPOについてのお話。
リゾート地セブ島は貧しい地域も内包しています。ホームレスも物乞いも、スリもたくさんいるのが現実です。学校に通わず、1日中道で寝ている子どもも、ラグビーと呼ばれるドラッグを買っては幻を見て空腹を忘れようとする子どももいます。
学校のグラウンドで歓声を上げて友達と走り回ったり、図書室でお気に入りの作家の本を見つけたり、クラブ活動でコーチに怒られていじけたり。そんな「子ども時代」を過ごさないまま、うつろな目をして大人になっていく子どもたちがたくさんいます。
そんな子どもたちに向き合い寄り添うNPOの1つに、今回ご紹介する「セブンスピリット」があります。
セブンスピリットは、子ども達が子どもらしく、楽しみながら社会を生き抜き、未来を切り開くために必要な力を養う環境づくりを行うため活動しているNPO法人です。
「ライフスキル」という言葉をご存知でしょうか? WHOの定義によれば、それは「日常で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」のこと。
セブに暮らす子どもたちの多くは、生活環境が荒れていたり身近で犯罪が起きたりと、この「ライフスキル」が求められる場面に遭遇します。ですが学校に行けなかったり、幼い頃から物乞いをしているような子どもたちは集団行動をする機会がないため、それを通して規律意識や忍耐力をつけることが難しいのです。
そこでセブンスピリットは音楽やスポーツを通してライフスキルを身に着けてもらおうと、子どもたちに様々な機会を提供しているのです。
子どもたちは「セブンスピリット」という社会で生きがいや楽しみを見つけ、夢に向かって努力することを学びます。
参考
LIFE SKILLS EDUCATION IN SCHOOLS
セブンスピリットはスラムエリアへの訪問と、セブンスピリットの子どもたちと交流ができるスタディツアーを開催しています。今回はプログラムA・イナヤワン・ゴミ山エリアのツアーに参加させていただきました。
ゴミ集積場の目の前には約1000世帯が暮らす。
では、貧困地域スタディーツアーへ。プログラムAの今回は、【セブ港周辺のスラムエリア】へ連れて行っていただきました。
バンに揺られること数十分。イナヤワン・ゴミ集積場 スカベンジャーエリアに到着です。
一見するとゴミは見当たりませんが、進んでいくとゴミ山が見えてきます。

見えてきました。ゴミの集積場です
フィリピンでは焼却場の整備が十分でないため、ダイオキシンが発生するプラスチックの焼却処分を行いません。分別されずにゴミ箱へ入れられたものは廃棄処分場に積み上げられていきます。

もちろん、空気もにおいも良くありません
このようなゴミ山から廃品を回収し生活の糧としているスカベンジャーと呼ばれる人々も存在します。

ゴミ山の陰には、朽ちた廃屋が

分別されずに捨てられたゴミは、こうなるのです
日光の影響で化学反応が起き、自然発火することもままあります。その危険性からこのイナヤワンのゴミ山は立ち入りが制限されています。

フィリピンのソウルフード・Jolibeeも、食べたらゴミになります

可愛らしいおもちゃも、ゴミ山の1部

きっと誰かのお気に入りだっただろうぬいぐるみ

人々が暮らす集落とゴミ山は、金網でかろうじて区切られているのみ

犬もいます

約1000世帯の集落
住居も粗末なつくり。裕福な集落ではありません。

家畜もいます。人が、ここで暮らしているから

タイヤがたくさんあります。廃材を利用したものでしょうか
そんな集落に住む、ホセさんご家族にお話を伺います。
企業の所有地に住んでいたホセさんご家族。立ち退きを要求され、この場所へ移り住みます。セブンスピリットとのご縁があり、今こうして訪問することができました。
「子どもたちには良い教育を受け、大学を卒業してほしい」と語るホセさんご夫妻。「良い仕事につくことができ、明るい未来が開けるから」

Edd Sheeranの歌を口ずさみながらお父さんとお母さんの話を聞く子どもたち
こうしてお邪魔している私達に、笑顔で「遠くからお客さんがたくさん来てくれて嬉しい」と言ってくれるホセさんご家族。
フィリピンの社会と、セブンスピリットについて学ぶ
ツアーのあとはスタジオへ戻り、セブの貧困についてレクチャーしていただきます。フィリピンの教育、社会、労働状況などの情報を通して、フィリピンの人々の生活と子どもたちの未来について考えます。

ゴミ集積場を訪問したあとのレクチャーは、より心に迫ってきます
セブンスピリットのあゆみについても教えていただきました。2012年に設立されたセブンスピリット。東日本大震災のTシャツプロジェクト や日本公演、そして設立から現在に至るまでの子どもたちの変化まで。

スタッフ永田さんによる、熱のこもったレクチャー。参加者の質問にも答えてくださいます
セブのスラム街で、外国人である日本人が新たな活動を始めることはたやすいことではありません。地道に活動を続け、子どもたちやその家族からの信頼を得、今のセブンスピリットがあるのです。
このあとは子どもたちと音楽を使ったアクティビティを行い、交流します。その模様はこちらで紹介いたします。
スタディーツアーは毎週開催されています。詳しくはこちら。